カラダおもいの冷凍プリンができるまで

こんにちは。

「カラダ思いの冷凍プリン」ができるまでのストーリーに興味を持っていただきありがとうございます。

 

これからなぜ、冷凍プリン作りを何度失敗しても諦めきれずにいたのかを、少々長くなりますがお話ししていこうと思います。

 

「カラダ思いの冷凍プリン」が、もし皆さまのご家庭の冷凍庫にいくつかあったら、どんな場面で「あってよかった!」と思いますか?

 

例えば・・・

*「私には、生まれたばかりの赤ちゃんがいて、なかなか出かけられないから、質の良い材料で作られた美味しいプリンがいつでも食ベられるんだったら、まとめてお取り寄せして冷凍庫に保管しておけて嬉しいかも! 母乳で育てているから、安全で美味しい卵とジャージー牛のミルクで作られたこのプリンは安心して食べられてストレスレス!」

 

*「共働きなので、週末にまとめ買いをしています。子どもに栄養のバランスがとれた安心なものを食べさせてあげたいと思っているけど、長期保存できるものは添加物がいろいろ入っていて気になります。安全な卵と牛乳が原料なのに、解凍しても滑らかで美味しいってホント? そんなプリンをいつでも食べさせてあげられるんだったら、たくさん買い置きしたいです。とても重宝しそう!」

 

*「自宅で介護をしていて、お父さん、お母さんに栄養価の高い、口当たりの良いプリンを食べさせてあげたいけど、普通プリンは買ってきても消費期限が1~2日なので、一度にたくさん買えないです。宅配でお取り寄せしても、長期保存ができるプリンは卵と牛乳を使っていなかったり、保存料や添加物がたくさん入っていて身体に良くないし美味しくないです。でもこの冷凍プリンは、解凍しても口当たりが滑らかで、昔ながらの懐かしい卵そのものの味が濃厚!3時のおやつや食後のデザートが楽しみになるんじゃないかと思います。何より食べたいと思った時にいつでも食べさせてあげられるのは嬉しいです。」

 

*「私は、抗がん剤治療をしていて、何を食べても味がわからないし、いつもムカムカしているから、もう何も食べたいと思わなくなってしまいました。でも、抗がん剤は、癌細胞を叩くと同時に良い細胞も壊してしまうから、何か食べて栄養をつけないと、免疫力が回復しなくて、体調は悪化するいっぽうです。そんな中、母がプリンを作ってくれました。小さい頃から病気になったらよく作ってくれた、卵がたくさん入ったプリンです。それをチルドでよ~く冷やして食べたら、味は良く分からなかったけど食べることができました。母は東京に住んでる私のところに、父の3日分の食事の用意をして、大阪から毎週来てくれます。こちらに来たら、5歳の娘の幼稚園に持って行くお弁当のおかずを作ってくれて、余裕があれば、プリンを作ってくれます。娘もおばあちゃんの作るプリンが大好きなので助かります。でも手作りプリンは日持ちがしないから作り置きできません。このプリンが冷凍できたら、少し気分が良くなったときに食べられるのに・・・1年間続いた抗がん剤治療の間、何度もそう思いました。もしこの「カラダ思いの冷凍プリン」に出会っていたら・・・」

 

皆さんの置かれた環境は、本当に様々ですよね?

実は、最後の声は、私の声です。「カラダ思いの冷凍プリン」の開発は、15年前の抗がん剤治療がきっかけで、お母さんが作る卵と牛乳と砂糖だけの美味しいプリンが冷凍保存できたらいいのに…から始まりました。

 

抗がん剤治療が始まると、味覚は抗がん剤の味になります。だから、食べるものすべてが抗がん剤の味になるので、食べる楽しみがなくなります。でも、私には5歳の娘がいて、その娘のために、主治医の先生と約束した「1年間どんなにしんどくて苦しくても頑張ること」を、母が作るご飯やプリンに支えられて乗り切ることができました。ただ唯一残念だったのが、母はまとめて20個とかつくってくれるので、母のプリンを凍らせて解凍すると、巣がいっぱい入ってしまって、ザラザラ、ぼそぼそとした食感のものを我慢して食べていました。

 

それから8年後、ずっと転勤族だった妹家族から帰国の目処が立ったという知らせを受けて、ひとりではもう限界状態だった私は、思い切って生まれ故郷の関西に戻る決心をしました。芦屋にアトリエを移転して間もなく、友人から、ユニークな発想を世に送り出したいと思っている代表者さんたちが集う「旬の会」に誘っていただき、主催者である株式会社ハートスフードクリエーツ代表の西脇社長に出会いました。たまたまお隣の席に座ったご縁だったのですが、冷凍プリンの話をしてみよう、もしかしたらヒントをいただけるかもしれない、そう思って「私の夢は、冷凍プリンを完成させることなんです。でも、卵と牛乳とお砂糖だけで作ったプリンは解凍すると離水(たんぱく質が温度変化を受けることで、細胞組織が壊れ、内部に留まっていた水分が分離して凝固、解凍すると水になって出てきてしまう現象)してしまいます。その離水問題さえクリアできれば、昔ながらの味の滑らかな舌触りの美味しいプリンができるはずなんです!」するとその熱弁が通じたのか、「うちには保育園のお弁当の食材やデザートを冷凍するのに必要なので急速冷凍機があります。普通の冷凍庫で凍らせると離水するものも、一気に冷凍することでタンパク質の破壊を防げるかもしれません。ウチの急速冷凍庫を使って一度試作してみませんか?」と言ってくださいまし。この西脇社長の一言がなければ、今の「カラダ思いの冷凍プリン」は存在しません。ワクワクする思いと感謝の気持ちと共に早速、ハートスフードクリエーツの工場長さんと一緒にレシピを考え、試作を重ねる日々が始まりました。

 

そして1年後の2020年、コロナ禍でも試作を続け、離水を防ぐための増粘剤やゲル化剤といった添加物を使わずに、自然素材で代替になるものも色々試してみました。そして、最後に見つけた素材が”葛粉”で、なめらかな食感に仕上げることができたので、急速冷凍機にかけ、解凍しても離水しないなめらかプリンが完成しました。

 

早速 makuake(クラウドファンディング型ショッピングモール)に出品して、応援して下さる方を募ったところ、130人余りの方が興味を持ってくださり、予約購入していただくことができました。

いよいよその方たちへ発送する日が迫り、商品を作ることになったのですが、思わぬ事態に追い込まれることに・・・プリンを発送する前日になっても固く仕上がってしまったり、焼き温度や時間を調整すると、今度は柔らかくなりすぎてしまったり、また1/3ほどに離水も見られ、仕上がりにムラができてしまい、うとうタイムリミットになってしまいました・・・。 応援購入をしてくださった皆さまにはお詫びのお手紙を添えて、まだ未完成のものをお送りしなければならない結果になってしまったのです。

後々わかったのですが、葛粉を使った冷凍プリンの試作をしたのは3月、マクアケに出品したのが5月、応援くださった方々へお送りするのは8月でした。そうなんです、試作をしていたのは寒い3月、商品を発送する時期は真夏の8月、厨房内の気温や湿度が違うだけでなく、新鮮な卵と牛乳を使っていることから、夏は、母鶏や牛たちがたくさん水を飲むことから、卵や牛乳の水分が多くなってしまうんです。配合の割合が少し変わるだけでも失敗に繋がるプリンですので、試作のときと条件が全く違ってしまったことが原因だったのではないかと今は思っています。

 

もう冷凍プリンを実現させるのは無理なのかもしれないと思い、それ以上試作をすることもなく、2年の月日が流れた頃、環境に配慮した包材を探す目的でフードショー(展示会)を訪れた時のこと、商談を済ませて帰る途中に、カネカ食品さんのブースの横を通りました。その時、一緒にいた妹(ひみつのひとさじ何でも屋の清水)が「この会社に何か用がある気がする・・・でも何の用だったっけ ??」としばらく頭をloading(ローディング)していると「きのこ??」「えのき!!」そうなんです、ハートスフードクリエーツの工場長さんが「確かエノキ由来のもので、冷凍して解凍しても離水しない粉があると聞いたことがある」と言っておられたことを思い出したんです!その粉は「カネカ食品さんが持ってる」ということを・・・唐突ではあったのですが、早速ブースに入って「エノキ由来の魔法の粉」について聞いてみました。

すると思わぬ回答が返ってきました。カネカ食品社員さん:「エノキタケエキスのことは知っています。プリンを作りたいのでしたら、商品開発担当の者がおりますので呼んできますね。」そして、その担当者こそが、その後私たちの冷凍プリンを実現可能にするレシピを考案してくださったH.N.さん:「おそらく冷凍プリン、作れますよ。」大聖寺&清水「え??!」

 

それから間もなくして、H.N.さんはレシピと必要なオーブンの候補、実現までのシミュレーションなど計画表を持って私たちのアトリエを訪ねてくださいました。

「新鮮な卵と牛乳と還元麦芽糖で冷凍プリンを作ることは可能なのですが、解凍した後の食感を作り立てのプリンと同じ滑らかさに保たせるには、それぞれのの材料の特徴を知った上で、オーブンの焼き温度と焼き時間、蒸し焼きにするときの蒸気の量と温度、蒸気をかける時間、冷凍する際の温度、冷凍時間などなど、全て予測を立てた上で、細かい計算をしてレシピを作らなければなりません。」でも、そのややこしいことを理論と計算に基づいて算出し、そのレシピで第一回目の実験をすることが決まり、しばらくストップしていた冷凍プリンの実験第2弾がスタートしました。

今回のプリンを作るのに適したオーブンで候補に挙がったのは二つだけ。その一つは各県に数台しか存在しない高価なものであることから、製造元へ出向いて試作させていただくことになりました。そしてその1回目の実験でできたプリンは、冷凍して解凍しても、上部に泡の潰れた後が見られたものの、舌触りは滑らかなものに仕上がりました!次に改良するのは硬さと味です。ということで、引き続き試作を続けることになりました。

 

秋真っただ中のその頃、アトリエは、一年を通して一番忙しい時期。カネカ食品さんとの出会いは9月初旬。冷凍プリンの試作を重ねてレシピがほぼ決まったのが10月下旬頃でした。このプリンを作るには、どうしても試作をさせて頂いたような高性能のスチームオーブンとブラストチラーがないと作れないのですが、そんな高価な機器を買うことは私たちにはできない事情をわかって下さっていたカネカ食品さんから助成金申請のご提案をいただき、「ものづくり助成金」を申請することに決めました。コロナ渦で始まった助成金の中でも中小企業庁の「ものづくり助成金」の最後の助成金だったことから、申請が通る確率は五分五分、たくさんの会社が申請する予想なので審査に通るのはかなり厳しいとは思います。とのことでした。おまけに、2022年度最後のこの助成金申請の締切日が1ヶ月後に迫っている状況下です。でも10年も前から抱いて来た夢をあともう一歩のところで諦めることはやっぱりできず、ダメもとで思い切って申請することにしました。年末の超繁忙期の中で清水(妹)は、通常業務をこなしながら、山ほど準備しないといけない書類を必死に集め、書類提出の締め切り時間の数分前(忘れもしません2022年12月22日17時)まで粘って書類を完成させて申請しました。その後は、怒涛の毎日を送っていたことから助成金のことはすっかり頭から消えてしまっていましたが、2月初旬に「採択」なるメールが1通・・・「採択?」通ったってこと??!とても短い事務的なメールでしたが、間違いなく審査に通り採択されたという内容でした。助成金申請で分からないことをたくさん質問させていただきお世話になった方々にも、「これは通ったということですか?」と質問してみたら、「そうです、おめでとうございます!」と返事をいただき、そこではじめて「本当に通ったんだ!やったー!!」と清水(妹)と一緒に大喜び!!!ようやく先が見える一歩を踏み出すことができました。

 

でも、助成金をいただけるということは、年内に新プリン工房を完成させ、稼働させ、また12月に結果報告をしないといけないということです。その時点で残り10ヶ月しかありません。早速大工さんに申請通りの新しい厨房を作っていただき、申請通りの機材が入ったのが7月末~8月初旬、厨房で働く人のためのマニュアルを作り、本番通りの手順でプリンを作ってみて、工房としてちゃんと稼働しはじめたのが10月、そこからまた分厚い結果報告書を作成して12月末に提出・・・。全ての工程を何とか間に合わせることができ、助成金を無事いただくことができました。自力では到底買うことができない高価な業務用スチームオーブンとブラストチラー(急速冷凍機)が大型トラックでやって来て、工房に搬入される作業を見ながら、これで、念願の冷凍プリンが作れる!と、長年のいろんな苦労の場面が過り、嬉しさの反面、このプリンを必要としてくださる方に、どのようにして知っていただき販売するのか、まだまだこれからやらなければならないことが山ほどあることから少し不安にもなりましたが、もう後戻りはできないから、気を引き締めて頑張るぞ!と改めて決意しました。

 

「カラダ思いの冷凍プリン」は、16年の年月を経て、こうして完成しました。

様々な生活の場面を想像して、1個、2個、6個、10個用のオリジナルの箱を何度も打ち合わせを重ねて作りました。これらの素敵な箱は、京都の老舗の株式会社第一紙行様の若手ガールズチームにご協力いただき、お客様により身近に感じていただける温かいデザインに仕上がりました。また、「カラダ思いの冷凍プリン」のこだわりをまとめたLPも作っていただきました。今読んで下さっているこちらのブログは、そのLPと繋がっているものです。

 

また、このプリンの開発を機に、ひとつひとつ作るお菓子にはストーリーがあって、買って食べてくださるお客さまに幸せなひとときを感じていただけるよう、お菓子のことをもっとお話ししていきたいと思い、公式ホームページを新しく作り変えました。さらに、よりストレスなくお買い求めいただけるように、オンラインショップサイトも同時にリニューアルいたしました。その二つのサイトのデザインを手掛けて下さった株式会社デザインブリッジ.jp 代表の西田さん、デザイン制作担当の小池さん、動画の撮影制作担当の金石さんに出会えたことで、長年やりたかったけれどできなかったことが全てできました。こうしてプロローグが整い、生まれ変わった*ひみつのひとさじ*の第二幕が始まります。西田さん、小池さんをご紹介くださったY社の渡邉さんも忘れてはならないお一人です。芦屋に移転してからずっと*ひみつのひとさじ*を支えてくださり、そして公式ホームページと新たなショップサイトの立ち上げにもご尽力くださいました。他にも「カラダ思いの冷凍プリン」の完成まで携わって下さった方々はたくさんいらっしゃいます。そのお一人お一人に出会っていなければ完成しなかった冷凍プリン。心から感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。このご恩は、このプリンを必要としてくださる方々へたくさんお届けしていくことでお返ししていきたいと思います。

 

「カラダ思いの冷凍プリン」のお話、いかがでしたか?この長過ぎるお話をここまで辛抱強く読んでくださったお客さまには、感謝の気持ちを込めて、次回ご注文下さるときにプリンを1個プレゼントさせていただきます!クーポン番号を忘れずにお知らせくださいね。クーポンコード《R691》

こんなに長いブログを頑張って読んでくださり本当にありがとうございました。後にも先にもこんなに長いのはこれっきりです(笑)これからは、短いブログを不定期ですが書かせて頂こうと思いますので、また見に来てくださいね(*^^*)

 

ひみつのひとさじ 店長 兼 チーフパティシエ mariko

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